以下は、「J-CASTニュース」さんからの転載です。

〈転載開始〉

見知らぬ人すべて「不審者」扱い これじゃ誰も子ども助けない
教育評論家の尾木直樹さんに聞く

http://www.j-cast.com/2009/01/02032900.html

迷子を送り届けようとして逮捕された事件が埼玉であった。あいさつしただけで不審者とされるケースも増えている。背景には、子どもを狙った凶悪事件の多発があるが、過剰反応とは言えないのか。教育評論家で法政大教授の尾木直樹さんに、話を聞いた。

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教育評論家の尾木直樹さん

 

「おはよう」とニヤニヤすると不審者になる

 

――「事件」になった背景には、不審者に対する地域社会の過剰反応があるようですね。

尾木 不審者情報はものすごく多く、ある市では、1か月で2000件も流していました。「おはよう」とニヤニヤし ていただけで流れるというんですね。でも、これでは情報としての機能を果たさず、人間不信ばかり煽るのではないでしょうか。不審者はごく少数なのに、これ では逆に子どもに何かあっても、声をかけなくなると思います。ナンセンスですね。

――子どもが過剰反応するケースも多いようですね。

尾木 東北地方のある市では、子どもが知らない人から電話を受けると、無言のままだというんです。家庭や 学校が、電話では相手が分かってから答えるよう指導しているからです。近所の者だと説明して初めて、「ああ、おじちゃん」と答えるそうですよ。電話で、親 が不在なことがわかると襲われる恐れがあるので、ウソをつくこともあるそうです。

――なぜ保護者ら身内以外を不審者とみるようになったのですか?

尾木 高度経済成長下における近代化で、地域コミュニティが崩壊したことがあります。それは、労働者が企 業に吸い取られ、地域に代わって企業が居場所になったということですね。また、家庭も同時に破壊されてしまいました。しかし、最近は、グローバル化による 競争社会で、企業からも切り捨てられる人が増えています。その結果、居場所をなくし、社会への恨みが募って、復讐のための無差別殺人まで起きるようになっ たのですよ。

――埼玉の事件の男にも、何か問題はありますか?過剰反応の中で、自ら疑われるという危険を考えるべきだったのでしょうか?

尾木 6歳の子どもなら、私も不安になります。1時間半も車で子どもを連れ回したら、疑われると頭に入れるべきだったと思います。送り届けるのに30分以上かかるなら、警察に連絡したり連れて行ったりすべきでした。

あいさつで心を通わせることが大事

――自治体は、子どもたちを守ろうと、地域での声かけを励行しています。しかし、見知らぬ人が声をかけても不審者に見られるだけでは?

尾木 九州のある地域では、PTAがあいさつ運動にとても熱心で、「1日10人以上声かけ運動」というの もありました。あいさつタイムや、あいさつストリートがあったり、あいさつカレンダーさえPTAで配られたりします。でも、PTA会長が交流活動で隣の小 学校を訪ねて子どもたちに声をかけたとき、「知らないおじさんだ」とみな逃げてしまいました。運動だと形式ばかりで、実にばかばかしいと思うんです。僕 は、あまりこういうのが好きでないんですね。

――では、どうしたらいいですか?

尾木 形だけ機械的に、「おはよう」と言えばいいのではありません。あいさつは大事ですが、対症療法で地 域は作れないんですよ。「元気ないね、つらいことでもあったの?」「お母さんから怒られたのか」こんなふうに、心を通わせることが大事なんです。あいさつ は、心と心のキャッチボールのきっかけに過ぎない。大声でのあいさつを自慢する学校も多いですが、気持ち悪いだけでおかしいですよ。

――地域社会崩壊の中で、心を通わせるのは難しくないですか?

尾木 それだからこそ、家庭で普段からコミュニケーションの努力をすることが大切です。子どもと朝ご飯を 一緒にしたり、夜もなるべくそうする努力をしたりするとか。心を通わせる努力ができないような国家なら、いずれ崩壊してしまいますよ。勝ち組、負け組だけ の社会でいいんでしょうか。子育ては、一人ではできませんので、コミュニティでグループを作り、知恵を出してお互いに支え合う地域作りをすることが大切で しょうね。

――どこかに、いい具体例はありますか?

尾木 オランダに、ワークシェアリングというのがあります。不況でも投げ出されない、いわば社会のセーフ ティネットで、これだと両親のうちどちらかが家にいることになるんですよ。夫婦が協力して子育てをするので、子どもにいい影響を与えることになります。社 会の構造を変えないで、あいさつだけではダメです。社会全体が支え合うことで、コミュニケーションの質が変わってきます。国としてのビジョンが問われてい るんですよ。


尾木直樹さん プロフィール
1947年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校や都内の公立中学校などの教師を長年務める。その後、教育評論家として、講演活動やテレビのコ メンテーターなどとして活躍。現在、法政大学教授。また、臨床教育研究所「虹」を主宰し、教育現場などについての調査・研究活動もしている。「『よい子』 が人を殺す~なぜ『家庭内殺人』『無差別殺人』が続発するのか」(2008年8月、青灯社刊)など著書多数。東京都武蔵野市在住。

〈転載終了〉

 

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